料理の道は

 

 

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「よし! 今日はここでキャンプにしよう!」
 ということで、カイル一行はキャンプの準備に取りかかっていたが、そこで大きな問題が生じた。
「なあ、カイル」
「? どうしたのさロニ」
「食材がほとんどねえ……」
『えぇ――――っ!?』
 ロニの発言に、カイルのみならず、数人の声が見事にハモった。


「ちょ、ちょっと! それなら買いに行かなきゃ!」
「あのなあ、カイル……それができてたら野宿なんかしねーだろ」
「あ、そっか」

 納得するカイルの後ろでは、イクシフォスラーが煙を上げていた。
 というのも、数時間前、イクシフォスラーが山の岩あたりにすれたらしく、そこから故障したのである。
 実際、イクシフォスラーをハロルドとジューダスが直しにかかっている。

「誰かさんができもしねえくせに、『操縦させて!』とか言ってジューダスの邪魔をしやがったから……」
「うっ……」
「全くだ、後ろからしがみついて来たら、誰だって操作を誤るだろうが……もっと考えろ」
「……ごめん」
 次々に責められて、今回の事件の犯人、カイルが小さくなっていく。

「とは言え、カイルを責めたところでどうしようもない」
「だよなあ……」
 はあ……とため息をついて、ジューダスは修理の手伝いに戻り、ロニはナナリーと共に再び袋の中の食料を確認した。

「あるのはリンゴ一個、ミソ二個、パスタ三束……微妙な残り方をしたもんだよ」
「はあ……。しかも調味料の類もほとんど切れちまってやがる」
「今度街に着いたら、まとめ買いしようと思ってたんだけどねえ……」
 袋の中の食材と調味料をひっくり返して、さらに盛大にため息をつくしかない。


「で? 結局今日の食事はどーするんだよ、ナナリー」
 一行の料理長とも言える存在のナナリーに、ロニがすがるように聞く。
「この食材で何とかするしかないに決まってるだろ? あと、この辺のものだね」
「この辺のものって?」
 今までカイルと一緒に薪を集めていたリアラが、ナナリーの言葉に反応した。

 それに対してナナリーは当然のごとく、
「この辺のものだよ。適当に食えそうなものを拾えってこと」
 とさらっと答えた。
「さすがワイルド育ちは違うねえ……」
「じゃあ聞くけど、リンゴとミソとパスタでマトモなものが作れるのかい?」
「無理だよね。近くにあるんだったら、それでいいんじゃない?」
 ナナリーはロニに言ったのだが、ロニの後ろにいるカイルが代わりに即答した。

「カイルは聞き分けがよくて助かるよ。そこの男と違って」
「て、てめえ……そういうこと言うか」
「本当のことだろ?」
「何だとー!?」
「……というよりだな……決まったのならさっさと行け! このバカコンビ!」

 いつものように喧嘩モードに突入するナナリーとロニに、耐えかねたジューダスが叫び、二人が同時にジューダスに向かって言い返した。
『こんなのと一緒にするな!!! ……あ』
「ふっ……」
「あはは、おっもしろ~い♪」
 一糸の狂いもなくハモった二人を、ジューダスだけではなくハロルドまでもが笑う。

『笑うなそこ!!』「ってマネするんじゃねーよ!」「あんたがあたしのマネしてんだろ!?」
「いい加減にしろ!!」
 再び痴話喧嘩に戻るナナリーとロニを、摘み出すようにジューダスがナイフを投げた。
 さすがの二人も喧嘩どころではなく、ナナリーの言った通り「この辺のものを拾ってくる」ためにその場から去った。

「り、リアラ……オレ達も行こっか」
「そ、そうね。えっと・・・ジューダスにハロルド・・・お留守番よろしく」
 雰囲気に飲まれたカイルとリアラも、逃げるようにロニ達の後を追った。

 そして残ったジューダスとハロルドは……
「まったく。料理前からここまで時間がかかるとは……情けない」
「とか言っちゃって、本当は楽しいくせにっ♪」
「……修理を続けるぞ。」
「ホイ来た! この天才ハロルドに任せたら、ど派手な故障も寝るまでには直せるわよー♪」
 もちろん食事の内容は気になってはいたが、考えても仕方がなく、イクシフォスラーの修理を再開した。



 そして食料調達組は、森に入って食材になりそうなものを探していた。
「ったくジューダスの野郎……あそこでナイフ投げてくるのは反則だろーが……」
「つべこべ言わずに探すんだよ、このバカ男」
「そもそもてめえが俺につっかかるからこうなったんだよ、この男女!」
 またしても懲りずに痴話喧嘩を始める二人だったが、すぐにカイルが間に割って入った。
「ねえ、二人とも……もうやめない?」
「やめないと、インブレイスエンドで黙らせるわよ」
『……』

 カイルに続いて喧嘩の仲裁に入ったリアラだったが、その恐ろしい発言に全員が何も言えなくなった。
「あ、じょ、冗談よ……冗談」
 かなり青ざめた顔で視線を集められて、リアラはにこっと笑って訂正したが、全員がそれで安心するはずもなく。
(さっきの顔はマジだったぞ……)
(あの笑顔が逆に怖いんだよねえ……ジューダスより怖いかも)
(リアラだけは怒らせないように、オレがちゃんとロニとナナリーを監視しなきゃ!)


 リアラのあの発言のせいか、ロニとナナリーはこれ以上喧嘩をすることもなく、二手に分かれて食材を探しに出た。

 一方はリアラとナナリーの女子組。
「あ、これは大丈夫かしら? リンゴだけど……」
「うん、この程度の虫食いだったら、逆に美味いよ」
「へえ」
「おっ! あそこのモンスターは焼いたら中々いいんだ! 逃がすもんか!」
「了解! フレイムドライブ!!」

 そしてもう一方のカイルとロニの男子組はというと……
「見て―! キノコが見つかったよ!」
「バカ! これは毒キノコだカイルっ! 食ったらやばいって」
「そうなの!? じゃあ、こっちは?」
「これは毒草だって……」
「えっ!? それじゃあもしかして、これもダメ!?」
「どわあぁぁぁ!! 蜂の巣なんか持ってくるな――――!!!」

「……森のほうが騒がしいな」
「気になるわね……」
森から聞こえてくる騒がしい声はジューダス達の耳にまで届いていた。



「ただいまー!」
「帰ったわよ」
「おかえんなさい♪ おっ! なかなか取れてるじゃん!」
「ほう……よくここまで見つけてきたな」
 リアラとナナリーの女子組は、ベア系モンスターの肉と、森の果物をある程度持って帰ってきた。
 彼女達の思った以上の収穫に、ハロルドもジューダスも感嘆を隠せないでいる。

「……で、カイルとロニはどうした?」
「アレだよ」
「はううううう……」
「ま、マジで疲れた……」
 ナナリーが指した先では、カイルとロニがヘトヘトになって伸びていた。
 しかも収穫は全くないらしく、あまりにもの悲惨な状態に、ジューダスも怒りを通して心配そうな顔をするしかない。

「な、何をしていたんだ?」
「……カイルが余計なモンばっかり拾ってきたんだよ」
「ごめん…・・・」
「へえ。面白そうだから、後で聞かせてね☆」
 ハロルドの無邪気な(?)頼みを聞き終える前に、二人はその場でノックアウトしてしまった。

「お、おいっ! 大丈夫か!?」
「ちょうどいいからサンプルに……」
「って言ってる場合じゃないよハロルド! 回復回復!」
「カイルっ!! しっかりして!」


 こうして、何だかんだで彼らは夕食にありつくまでに二時間かかったという……


 料理の道は、果てしなく遠い。

 

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あとがき

4コマ漫画劇場の影響か、リアラがとても黒聖女様になっている……

2004年(日付不明) 旧サイト投稿

 

 

 

 

 

 

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