最強パーティが行く!

 

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一八年前のダイクロフトで、カイル達はバルバトスと再び対峙した。
「今度こそケリをつけてやるぞ、バルバトス!」
「そうだ、来い・・・カイル=デュナミス! 俺の渇きを癒せ!!!」
お互い武器を取って、真剣な顔でにらみ合った。
しかし、そのシリアスな状況は全く続かなかった・・・

『渇きって、喉の渇きでしょうか? 坊ちゃん。』
「いや、僕はアレの場合カルシウムが不足していると思う。」
「・・・あたしは単に歳をロニよりも無駄に取っちゃって、青春に渇いているんだと思うね。」
「無駄に歳を、って・・・俺をあんなのと一緒にするんじゃねえ!」
「・・・あのー・・・俺、どうしたらいいの?」
ソーディアン・シャルティエの言葉から、どんどん話がめちゃくちゃな方向に発展していき、取り残されたカイルが困った顔でパーティーを見た。
「あ、ごめんカイル。」
と、リアラが微笑んだが、あまり「ごめん」という感じではない。実際、隣のハロルドも楽しそうな顔でさらりと言った。
「ん~、実際はサルの戦闘本能が渇いちゃってるだけなんだろうけどね。」
「それって本能だけで生きてるってこと? うわあ・・・もしかして俺以下?」
さっきまでの真剣な顔つきから一変して、ハロルドの言葉を笑って答えはじめるカイル。
「そうだな。カイルの方がずっと考えて生きているし、理性もあるな。」
そんなカイルを戒めるのかと思いきや、ジューダスまでカイルの意見に賛成し始めた。
「ホント! ジューダス!? ジューダスが俺のこと誉めてくれるなんて、すごく嬉しいよ!」
「そ、そうか・・・?」
「まあ、アイツがサル以下なのは間違いないし~☆」

「貴様らーーー!!!! この俺を無視するんじゃねえっ!」
唯一会話に全く参加できていなかったバルバトス本人が叫んで、カイル達はようやくバルバトスの方を見た。
「・・・無視されて寂しいのね。」
「まるで子供だね。」
「同感だ。」
『本当。生まれ変わっても何一つ変わってないですよ、コイツ。』
「だってサルだもん。」
憐れみの表情をうかべるリアラに、ナナリー、ジューダス、シャルティエ、そしてハロルドが続けた。
「ロニ・・・戦闘がはじまらないんだけど・・・」
「っていうかカイル。早く始めねえと、ソーディアンが持たないぜ?」
ロニに言われて、カイルが神の眼に刺さっているディムロス達ソーディアンを見たら、どのソーディアンも刺した所から電気のようなものがバリバリ出ていて、かなり危険な状況になっている。
「すみませんディムロスさん・・・」
『いや・・・別に我々は構わないのだが・・・』
『すごい余裕ね、貴方達。』
『全くじゃのう・・・』
『いいのですか? そんなに緊張感がなくて。』
「あはは・・・それが俺達の特徴なんですよね・・・」
と言いながら照れ笑いをしているカイルを、ロニが思い切り引っ張った。
「だからカイル! 雑談してねえで、さっさとあの野郎を何とかするぞ!」
「う、うん! ねえみんな~早く始めようよー!」
「あ、ごめーんカイル! 早く始めましょ。」
「僕としたことが・・・まあ、さっさと片付ければそれで済むことだがな。」
「そういうこと! ちゃっちゃと片付けるよっ!」
「サル狩り開始~♪」
というカイル一行の会話はまるで緊張感がなく、どこかへ遠足に行くような感じだった。
『・・・その余裕は何なんだ?』
『さ、さあ・・・』
ディムロス達は、その余裕たっぷりの一行を半分呆れ、半分不思議そうに見ていた。


「よし! 今度の今度こそ、ケリをつけるぞ!」
「さっきからそう言っているだろうがあ! 灼熱のバーンストライク!」
逆上したバルバトスが術を前衛のカイルとロニに向かって使ったが、魔法防御を上手く使って大したダメージはなかった。
「へっ! なーにが灼熱だ! おいリアラ! 本当の灼熱を見せてやれ!」
「了解! ・・・古より伝えし浄化の炎、落ちよ! エンシェントノヴァ!」
「ぐわぁ!」
「散葉塵!」
「空破特攻弾!」
「当たってないしぃ? 龍炎閃!」
「双連撃!」
エンシェントノヴァが落ちてきたところで、カイルとロニ、そして少し後ろにいたナナリーとジューダスが一斉に武器攻撃を始める。
『見事な連携攻撃だな。』
『ええ、さすがね。』
『そういえばハロルドは何をしているのです? ここからはよく見えないのですが。』
『あ、ああ・・・術を詠唱中だな。』
ディムロスの言うとおり、連携攻撃の真っ最中にハロルドはずっと詠唱を続けていたが、ちょうど詠唱を終えたのか顔をあげた。
「そこだぁ! クレイジーコメット!!!」
「何い!!?」
「よし、さっすがハロルド!」
「さらに、トゥインクルスター! ミックスマスター! プリンセスオブマーメイド!」
と、次々に追加晶術を発動していくハロルド。途中でバルバトスがスピリットブラスター状態になっても構わず続け、このままバルバトスを瞬殺する勢いである。
しかも、途中でちゃっかりリアラがハロルドにパイングミをあげている。

『ハロルドって・・・あんなに強かったかしら?』
『そういえばそうじゃのう・・・千年も経ったから忘れたわい。』
とかソーディアンが会話をしているうちに、ようやくハロルドの術が終わったようだ。
「あ~疲れた。って、まだ生きてるの?」
「さすがUNKNOWNレベルだけあってしぶといねえ。」
と、ナナリーがハロルドの言葉に続いたが、二人とも妙に落ち着いている。
「何をしている、続けるぞ。」
ジューダスが晶術を詠唱し始めたが、それを見たバルバトスは一層に逆上した。
「貴様ら術に頼るなぁ!! 鬱陶しいっ!! 断罪のシリングフォール!」
バルバトスが岩を落とすことによって、ジューダスの詠唱はとりあえず中断されたが・・・

「ケリをつけるぞ!」
どうやらスピリットブラスター状態になったらしく、ジューダスがバルバトスに突っ込む。
「月閃光! 散れ、魔人滅殺闇! 交じあわざりし命に、今齎される刹那の奇跡、時を経て、ここに融合せし未来への胎動、義聖剣!! 僕は・・・過去を断ち切る! 散れ!! 真神煉獄刹!」
「すげえ・・・隠し秘奥義までやりやがったぞ・・・ジューダスの奴。」
「うん、大人しく術を受けた方がマシだったのにね・・・」
「まさにあれこそ断罪って感じだな・・・」
完璧なまでに技を連携したジューダスを見て、ロニもカイルも感嘆の言葉しか出なかったが、少しして我に帰ったのかジューダスに話しかけた。
ちなみにバルバトスは、ジューダスによって壁に打ち付けられて気絶している。
「ねえねえ、このまま仮面ここに捨てちゃおうよ。」
「俺も同感だ。こっちの方が断然イイぜ?」
「馬鹿か、戦闘が終わったらまたつける。元の世界に戻ったら、誰が僕の正体に気付くか分からんからな。」

「き、貴様ら・・・」
気絶状態から解放されたバルバトスが、よろよろと立ち上がった。
『カイル君、まだ奴は生きているぞ。』
「本っ当にしぶといねえ・・・」
ディムロスの言葉を聞いてバルバトスを一斉に見た後、ナナリーがメンバーの心境を代表した。
「微塵に砕けろぉ!!!」
バルバトスの必殺技であるジェノサイドブレイバーが発動し、カイル達に直撃した。
『カイル君!』
『ダメだわ・・・今のは回避できなかった・・・!』
『そんな馬鹿な・・・』
神の眼から戦闘を見ていたディムロス達だったが、カイル達が必殺技に飲み込まれたのを見て慌てた。
しかも、ディムロス達は全員、さっきの技がどれだけの威力をもっているか知っていたので、「もう駄目か」と諦めを感じてしまう。
『いや待つんじゃ! 生きておるぞ!』
しかし、クレメンテの言葉どおり、カイル達は全員生きているうえに、しかも全員立っていた。
「うわあ・・・びっくりしたあ・・・」
『坊ちゃん無事ですか!?』
「当然だ。窮鼠猫を噛む・・・だな。」
「全くだぜ! おい後ろは大丈夫か!?」
「大丈夫よ。全く問題ないわ。」
「こっちも! ちょっと驚いただけさ!」
「技の威力もあまり成長してないようだし♪」
と、口々に余裕さえ感じられる台詞を言う一行。

その状況に、ディムロス達ソーディアンはもちろんだが、技を放ったバルバトスが一番驚いている。
「な、何故だ・・・アレはこの俺の一番の必殺技のはず・・・」
「まだ気がつかないのぉ? あんたアホね。」
「何ぃ?」
『というより、私達も全く分からないのだが・・・』
『千年前のダイクロフトでは、貴方達そこまで強くなかったはずです。』
あの強さは異常だ・・・と思いつつも全く状況が理解できていないバルバトスとソーディアン達に、ハロルドが言った。
「それじゃー教えてあげる。あたしたちの強さのひ・み・つ☆ さあ、どうぞぅ!」
と、大げさな動作でハロルドがカイル達を見た。それにナナリー達が続いて説明を始めた。
「あたし達、三周目なんだよね。」
「しかも外殻で武器防具のスロットレベルを上げていたから、相当レベルが上がったんだ。」
「今、レベルいくつだっけ?」
「全員レベル103よ、カイル。忘れちゃダメじゃない。」
「まあ、レベル上げ終わってからも何だかんだで外殻で迷いまくったけどな! おかげで、今更てめえの技なんざ食らっても全然平気だぜ!」

それを聞いていたソーディアン達は、未だに信じられないが信じざるを得ない状況に言葉を失いかけている。
それでもカイル達は構わず話を続けた。
「やっぱ、GRADESHOPで買いあさって正解だったよねーロニ。」
「だよな、カイル! 連鎖発動だろ? 難易度と称号の引継ぎだろ? えーっと・・・」
「僕達の旅の経緯を考えると、晶術・特技の引継ぎもやったようだな。」
『使用回数の引継ぎもバッチリのようですね、坊ちゃん。』
「あと、追加発動技即習得もね!」
「最大HP増加と、経験値二倍も忘れてはいけないわ、カイル。」
「うん、そうだねリアラ! ホントはアイテム数30個も欲しかったけど、結局あまり必要なかったね。」
「・・・ってこと! OK?」
と、ハロルドがソーディアンに視線を戻した。ソーディアン達は全員、何とかそれに答えた。
『え、ええ・・・よく分かったわ・・・』
『説明ご苦労・・・じゃな・・・』
『なるほどな。道理で・・・』
『あり得ないくらい強いわけですね・・・』
「待て待て貴様らぁ!!!! この俺を無視するなと、何度言ったら分かるのだぁぁぁ!!!!」
今までの会話を呆然と聞いていたバルバトスだったが、ようやく立ち直って声を荒げた。
「まだやるつもりか。」
「・・・の、ようだね。」
と、ジューダスとナナリーが呆れた顔でバルバトスを見た。
「うっ・・・こうなれば・・・!」

バルバトスは、突然何を思ったか神の眼の上に飛び乗った。
「何をする気だ! バルバトス!!」
「もうてめえに逃げ場はねえんだよっ!」
「すぐに神の眼から下りなさい!」
「観念するんだね!」
「言ったはずだ、お前に歴史を弄ばせたりはしない!」
「あんたみたいなアホにはもうどうしようもないのよ! もちろん、神様にもね。」
その様子を見ているディムロス達は、いきなりのシリアスな展開にまたしても言葉を失った。
バルバトスは、神の眼から下りようとせず、叫んだ。
「クックック・・・いいか! 俺はお前達によって倒されたのではない! 覚えておけっ! ・・・ぐわああああああ!!!!!」
「!!!」
バルバトスは、神の眼の上で散った。


そしてその後、順調にシャルティエが神の眼に突き刺される。
『あ、ちょっと待って坊ちゃん!』
「何だ?」
突き刺した後、リアラがレンズでワープする直前にシャルティエがジューダスを呼び止めた。
『おかげで僕もかなりレベルが上がりましたよ。・・・今戦えばディムロス中将にだって勝てるかも。』
「・・・ふふっ、良かったなシャル。」
『あと・・・忘れ物ですよ。ほら、足元の仮面。』
「あ・・・ああ、すまない。」
ジューダスが外した仮面を手にとると、カイル達はリアラのレンズの力で光に消えていった。

『シャルティエ・・・お前そんなに強くなったのか?』
『だって、外殻の敵が絶滅するんじゃないかと思うくらい戦いこんでいたんですから。』
『・・・そうか・・・。ところでさっきはバルバトスのことを自分勝手な奴と言ったが・・・』
『ええ、自殺したくもなりますよね・・・あれは。』
『そうね・・・』
『渇きも癒されすぎたのう・・・』
神の眼がくだけるまでに、ソーディアン達は最後にバルバトスに対して少々の同情を覚えていた。


一方・・・
「エルレイン様。奴らはかなり強くなったようです。・・・いかがいたしますか?」
実は一部始終を見ていたエルレインに、従者のガーブが微妙な顔つきで聞いた。
「構わん。我が計画に支障はない・・・ところで・・・」
「はっ。」
「次のBOSSはお前だぞ? ・・・ガーブ。」
「・・・え?」
ガーブはこのとき、死刑宣告に近いショックを感じたという・・・。

 

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あとがき

TOD2発売間もなくくらいにキリ番リクエストをもらって書いたもの。

2003年(日付不明) 旧サイト投稿

 

 

 

 

 

 

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