IF FFT ~もしも獅子戦争がなかったら~

-特別編・ヴォルマルフの愉快な仲間達-

 

前提。
 ダイスダーグがバルバネスを殺すことをやめ畏国を平和に導くことにしたシリーズ。聖石は存在するが暴れない平和な世界。

あらすじ(二章中編でローファルとバルクに出番与えたのでその前日談みたいな感じ)
 炭鉱都市ゴルランドにて聖石があると知った教会は、ローファルとバルクに聖石を取ってくるようにと命令を下していた。それを知ったクレティアンは、自分の代わりにと、バルクからもらった魔石をローファルに手渡す。
 本編IF FFTではロークレ成立してるか考えてないけど、今回の話の前半部分はイヴァフェスのロークレ本のオマケとして書いたので、がっつりロークレ(クレティアンがローファルのことをめっちゃ好き)前提です。本でバルクの出番が今ひとつだったので、ロークレ前提だけどクレティアンとバルクが主役。

 

「この石は?」

 教会の命で炭鉱都市ゴルランドに眠る聖石を求めるべくバルクと共に準備を整えていたローファルは、クレティアンからひとつの丸い石を手渡された。

「これは魔石というものだそうだ」

 クレティアン曰く、バルクがかつて発掘していたような古の技術が使われていたものの動力として、火や水などの魔力が込められた魔石と呼ばれるものが使われていたらしい。バルクの魔法銃にもこの魔石が用いられており、バルクから余った魔石を頂いたクレティアンは、これをバルクと共に研究し、そして自らの魔力を込めることに成功したそうだ。

「これには私が独自に開発した、とっておきの魔法を込めておいた。私はゴルランドへ行けないが、私の代わりにこれを持って行くがいい」
「どんな魔法だ?」

 ローファルは尋ねた。見たところ普通の透き通った石で、ここにあるのが白魔法なのか黒魔法なのかすら分からない。

「相手の魔力に応じて動きを封じる魔法――時を止めるわけではないが、ドンムブやドンアクに近い。相手の魔力が強ければ強いほど効力がある。魔道士不在のパーティーにはおあつらえ向きのアイテムだ」
「成程……どうやって使うのだ?」
「これには使用者にもある程度の魔力が必要だ。石に魔力を込め、対象にしたい相手に向かって投げれば発動する。陰陽術を扱えるローファルであれば問題ない計算で作っている」

 自信たっぷりにそう説明するクレティアンを見て、ローファルは思った。多分クレティアンは自分も行きたかったのだろう、と。

(私の代わりにこの石を……か)

 ローファルから自然な笑みがこぼれた。

「な、なんだ? 私の説明に何か不備でも?」
「そうじゃない。ところでクレティアン、この魔石は使い捨てか?」
「いや。確かに一回分しか使えないが、私が魔法を組みなおせば再利用できる」
「ならば本番前に試してみるか」



 そう言ってローファルは石を握り陰陽術を扱う時と同じように魔力を込め、そして近くで黙ってアイテムの整理をしていたバルクに向かって放り投げた。

「!?」

 石はバルクの頭上で輝き、そして結界のようなものがバルクの周囲に張られた。バルクが結界に触れると、結界が電撃のようなものをバルクに与える。バルクは声にならない叫び声をあげて膝をついた。

「おお! 一度の説明で使いこなすとは流石はローファルだな!」
「いい魔法だ。ゴルランドの地下にはドラゴンがいると聞く……切り札に使えそうだ」
「そうだろう? 中にいるのが凡人だからあの程度だが、ドラゴンや強大な魔法の使い手であれば触れた途端に気絶ものだ!」

 満足げなローファルに、クレティアンは目を輝かせた。

「これでヴォルマルフ様も次はバルクではなく私をローファルの補佐としてつけてくださるはず……」
「って、お前らぁあああ!」

 結界の中から叫び声がしたので顔を見合わせていたローファルとクレティアンが視線を移すと、結界に触れまいと縮こまりながら怒りを露わにするバルクの姿があった。

「仲がいいのは結構だが、真面目に準備してたオレを巻き込むんじゃねえ! オレのお宝をこんな事に使っていいと思ってるのか、この雑魚魔道士!」
「ふっ……勝てぬからと遠吠えとは見苦しい。狙撃よりも価値のある私の魔法におそれをなしたと言えば許してやってもいいぞ」
「銃をディスるとはいい度胸だな。チャージ中に蜂の巣にしてやってもいいんだぜ」
「……よし。一生閉じ込めていいぞローファル」
「ふ、ふざけるな! お前の大好きなローファルの援護を誰がやると思ってる!? ヴォルマルフにお前らの噂のあることないこと全部流すぞ!」
「関係のないヴォルマルフ様を巻き込むな、この卑怯者めッ!」
「お前が言うなッ!」

 バルクに石を投げつけたのはローファルなのだが、レベルの低い口論を始めるクレティアンとバルクを見て、ローファルは大きく息をついた。

(バルクが会話に入ってこないから半ば冗談で投げた……つもりだったのだが。言い出しにくいな……)

 そんなことを言えば、おそらくこの矛先はこちらに向くだろう。一見相性の悪いように見えるが、元はと言えばローファルが手にしている魔石は二人が協力して作ったものなのだから。

(まったく、仲のいいことだ……)

 ローファルが魔力を解いたことで結界が消えてもなお争い続ける二人を見ながら、二人に気づかれないようローファルは微笑んだ。



~その前日~

「なんだこの石は」
「これは魔石だ。オレが昔魔法銃と一緒に発掘した」

 無表情で尋ねるクレティアンに、バルクは魔石についてざっくりと説明した。

「魔法銃の再現で余った分だが、どうやら魔道士が直接魔力を込めることもできるようだ。オレは魔法なんてめんどくさいものは使わないんでね。ちょっと協力しろよ」
「これが人にものを頼む態度か」
「お前こそそれが年上に対する態度かよ」
「……」

 クレティアンは息をつき、魔石と呼ばれた石を眺めた。一見普通の鉱石にも思えたが、中からわずかな魔力を感じる。教会にいくつかあるゾディアックストーン程ではないが、古の神話の時代は今の時代にない魔法も多くあったという。バルクが昔機工士として古の技術を発掘しており今もなお研究を続けているように、クレティアンもその時代のことには内心興味があった。

「それで、協力とは具体的に何をすればいいんだ?」
「言っただろう。オレは魔道士じゃないから魔力を込められるということまでしか分からないんだ。お前は性格クズの雑魚だが、魔法の知識だけはホンモノだからな」
「貴様のような自己中心的で信仰のかけらもない男に屑と呼ばれる筋合いはないな」
「上手くできれば次のローファルとの作戦に使えると思ったんだがな。残念だ」
「ローファル……か」

 バルクから出された名前に、クレティアンの表情が変わった。
 聖石がゴルランドにあるらしいという情報を得た教会は、ローファルとバルクの二人に聖石の取得を命じているのはクレティアンも知っていることだった。そして剣士として前線に立つことを好むローファルと、的確に銃でサポートをするバルクの神殿騎士としての相性がいいことも。
 性格ははっきり言って好ましくないが、バルクはテロリストとしての経験もあり戦術眼に優れている。そして聖石が炭鉱にある以上、発掘の内容こそ違えど坑道の知識を持つバルクがこの作戦に必要だと言うのも、クレティアンは分かってはいた。

「お前本当はローファルと組みたいんだろ? っていうか好きなんだろあいつのこと」
「……なっ」
「何故知ってるかって? カンだよ。あんな仏頂面のフード野郎のどこがいいんだか。ああ、オレは神様の教えなんて信じて守る気ないし、偏見もないから安心しろよ」
「いいか……誰にも言うな」

 バルクの両肩に手を置いて小声で凄むクレティアンだったが、バルクは「はいはい」と軽く答えた。だが、逆にバルクが真面目な顔で答えれていればかえって怪しいのも確かで、いつも通りの返答にクレティアンは安心感を覚え、大きく息をついて手を離した。

「魔石は望み通りゴルランドに向かうまでに何とかしよう……あと覚えておけ。私をこき使った貸しは絶対に返させてやるからな」
「その時は返り討ちにしてやるよ。……まあ、魔法ってのも武器とは時間差で畳みかけるには悪くない戦術だからな。お前の知識と実力は信じている。頼んだぜ」
「調子が狂うことを言うな。貴様はいつも通り自己中心的なクズでいいんだ。その方がローファルのことも任せられる……私の分も頼んだ」
「お前もいつも通り偉そうなクソ野郎でいいんだぜ。そっちの方がやりやすいからな」
 
 ニヤニヤとカンに障る笑みで答えたバルクに、クレティアンは渡された魔石を握りしめながらその場を去った。それによって自分の魔力が魔石に伝わるのを感じ、バルクが期待しているようにここに自分の魔法を組み込むことができそうだ、とクレティアンは思った。
 これはローファルのためであってバルクのためではない――そう言い聞かせながら、どんな魔法を石に組み込もうか思考を巡らせていた。

戻る

 


あとがき

 ローファル大好きなクレティアン、共闘しやすいローファルとバルク、争いは同レベルの者でしか(ry なクレティアンとバルク。
 私の中で、クレティアンとバルクは色や星座相性が真逆なように、性格も絶対的に合わないというか、互いに「こいつキライ」オーラを隠さずいつもつまらないことで言い争ってる(でも傍から見れば同レベルでウマが合ってる)イメージ。
 バルクは自己中心的のクズだけど、ベッド砂漠や聖域での自軍配置を見ると、相手が忍者や高低差無視、テレポ集団でもない限り自軍に有利でかつ相手を銃で迎撃しやすい配置になってるので、きっちり仕事できるタイプだと思う。

inserted by FC2 system