騎士の心がこの身にある限り

 

 私達兄妹は、ガリオンヌ地方の農村で生まれ育った。
 村はとても貧しかった。もう何十年も戦争をしていて、国のどこだって貧しいのだと、兄は私に言った。
 当時の私は良く分からなかった。何故なら、私にとってはこの貧しさが全てであり、生まれた時から当然のものだと思っていたからだ。


 そんな私にとっての一番の楽しみは、家の手伝いの合間をぬって行う、兄との"騎士ごっこ"だった。


「それ!」
「……おっと!」


 私の渾身の一撃は、いとも簡単に兄によって受け止められてしまった。
 だが兄は嬉しそうな顔で、私に言った。


「やるじゃないかミルウーダ!」
「なによ! まだまだぁ!」
「うおっ……と……すきありだ!」
「きゃあ!」


 バシっと兄の振り下ろした木の棒が、私の脇腹を弱く叩いた。


「またにいさんに負けたー!」
「ははっ当たり前じゃないか。オレのほうが大人なんだから」


 7つ離れた兄は、私にとってあこがれそのものだった。
 強くて、賢くて、優しくて、大人っぽくて。そんな兄に追いつくのが、その時からずっと抱いている私の目標だった。


「ねえ、なんでにいさんはこんなに強いの?」
「オレは将来騎士になるんだ!」
「ホンモノの騎士!? すごい!」


 両親や周りの人間はみんな兄のその言葉を聞いて、「騎士なんて貴族じゃないとなれない」と言って笑っていたが、私は兄なら遊びではない、本物の騎士になれると信じていた。


「わたしもなれるかな?」
「多くないけど、女の騎士だっているらしいぞ! ミルウーダならなれるんじゃないか?」
「ほんと!?」
「ああ。だって昔のオレより強いし、ミルウーダくらい負けず嫌いだったらオヨメに行くより騎士になったほうがいいよ」
「やった! じゃあわたしも将来騎士になる! それでにいさんを守るの!」
「ははっ頼もしいな! じゃあ一緒に騎士になろう!」






 それから数年して、兄は北天騎士団の傭兵募集の張り紙を町で見て、ついに騎士団へ行くことを両親に告げた。
 両親は当然反対した。平民が兵士になったとしても使い捨てられるだけだ、と。
 だが、兄も一歩も引かなかった。そしてある日ーー


「兄さん、どこへ行くの?」


 夜中にこっそりと家を出る兄に偶然気づいてしまい、私は家から少し離れたところで兄に追いつき尋ねた。


「……! ミルウーダ……すまない。オレはどうしても行きたいんだ」
「兄さんは騎士になるのね」
「ああ。オレはもっと強くなりたい。もっといろんなことを知りたい。だからここにいてはダメなんだ……」
「わかったわ。騎士になるって、兄さんの夢だもの」
「すまない。父さんと母さんのことは……」
「私も行く」
「……え?」
「私も連れて行って。騎士になるって夢を持っているのは兄さんだけじゃないわ」
「……だ、ダメだって。父さん達も言っていただろう、傭兵部隊は危ないところなんだ……まだお前は子供なんだぞ」
「兄さんだって父さん達の子供じゃない」
「そ、そうじゃなくて……そ、それにミルウーダは女の子で……」
「女の騎士だっているんでしょ?」
「うっ……」


 兄は視線をそらそうとしたが、私は兄をじっと見るのをやめなかった。
 そしてしばらくして……


「……家に帰りたいと泣いたって帰れないんだぞ」
「……」
「ああもう、分かったよ! どうせ振り切ってもついてくるんだろ! 一緒に行くぞ、ミルウーダ!」
「……うん!」


 こうして私達は村を出ることになった。
 もちろん育ててくれた両親に対する負い目もあったが、それ以上に、私は兄と一緒に騎士になりたいという思いが強くあった。
 そして私達がこの村に戻ることは、一生なかった。





 傭兵部隊に入った私達だったが、その入口からすでに順調ではなかった。
 特に私の存在は、他の傭兵達の笑いの種だった。まだ女にもなっていないような子供が何をしに来たのか、と。


「なによバカにして! あんなやつらなんて、私の剣技で全員やっつけてやる!」
「まあ落ち着けミルウーダ。来るべき時にお前の実力を見せてやればいいんだ。そのためにも、ほら」
「なにこれ?」
「本だよ」
「本?」
 
 初めて見る紙の束を渡され、私はそれをめくってみた。
 文字がたくさん並んでいたが、当然学んだことのない私にはこれが文字であることしか分からなかった。


「オレはまだ少しだけだが読めるぞ」
「え、どうして?」
「勉強したんだ。文字の読める正規兵に、教えてもらった。こうして本も貸してもらえた」
「……こんなの何の役に」
「ミルウーダ、オレ達は何をしにここへ来た? 騎士になりに来たんだろう? だが騎士になるには、剣術だけではダメだ。兵術や思想、知識も必要なんだ。そして心も」
「何が言いたいの、兄さん?」
「一緒に騎士になろうと言っているんだ。だがそれはオレ達を笑う奴らを見返すためじゃない。父さん達のような何も知らない人を守れる、そんな心も強い騎士に」



 
 強さだけではない。知識も心も得てこそ騎士であるーーそう言っていた兄は誰よりも努力し、そして誰よりも貪欲だった。
 寝る間も惜しんで本を読んでいた。聖書、歴史、地理、兵術、詩ーーあらゆる本を。そして本を借りるため正規兵に何度も頭を下げていた。
 剣術も正規兵のものを目で見ては、それを真似て自分のものにしようとした。
 そしてどれだけ馬鹿にされても決して怒らず、私だけでなく、他の平民の若者に自分の得た知識を教え、本を読み聞かせた。


「兄さん。兄さんはどうしてそんなに頑張れるの? もちろん私だって騎士になりたいわ……でも、兄さんのように頑張れない」
「楽しいんだ」


 ある日、勉強することが嫌になって兄にそう尋ねたことがあった。
 だが、私の問いに答える兄の目は輝いていた。


「楽しい?」
「ああ。新しい知識を得ることが。新しい世界を知ることが、とても楽しい。自分達はなんと無知だったんだろう……知れば知るほど、もっと知りたいと思うんだ」
「例えば?」
「そうだな……例えばこれは、世界で最初に生まれた人間の物語だ」


 兄の語った話はこうだ。
 神は自分の身体の一部を使い、男と女を生み出した。それが最初の人間となった。
 神は言った。「ここにあるものはすべて自由に使っていい。だが、あの丘の上にある木の実だけは決して食べてはならない」と。
 男と女は互いに裸だったが恥ずかしいと思う事はなく、神が与えた楽園を享受していた。
 だが、ある日ふと丘の上の木の実に興味を持ち、男と女はそれを口にした。それは知識の実だった。
 男と女は自分が裸であることを知り、茂みに隠れた。それを見た神は、男と女が知識をつけたことを知り、そして知識の実をつける木がある丘の向こうに存在する、地上へと追放した。
 だが彼らは得た知識を使い、不毛だった地上を耕し、そして子孫を増やしていった。


「どう思う? ミルウーダ」
「どうって……よく分からないわ。知識の実を食べて子孫を増やすことが出来たけど、食べなくても幸せに暮らせたんじゃないの?」
「そうだな。だが、知識をつけたことで人は他の動物とは違う存在となり、神が与えずとも、自ら世界を知り、考える生き物になったんだよ」
「考える生き物……?」
「そう。それは凄い事だと思わないか。そして全ての人間のルーツは同じ場所にあるんだ」
「みんな平等だってこと?」
「ああ。だが同時に、知識を得た者こそが、世の中を動かす力を手に入れる……それがこの世界だ」
「じゃあ……貴族や平民、正規兵や傭兵っていう身分があるのは何故? 学ぶ機会があるのは貴族や裕福な商人だけ。平等じゃないわ」
「そうかもしれない。だが、必ず身分など関係なく、すべての人が平等に学べる時代は来る。今だってこうして頑張れば、貧しい農家の子供でも勉強できるのだから」
「兄さん……」
「だからミルウーダ。一緒に行こう。オレと……いや、私と。知識の木の向こうの、新しい世界へ」


 目を輝かせたままそう言って私に手を伸ばす兄に、自分の未熟さを痛感した。
 兄は常に私の一歩、二歩先を歩いていた。
 兄に追いつきたい。兄の後ではなく、兄の横に立てる人間になりたい。
 私は兄の手を取って言った。


「私は兄さんとどこまでだって行くわ」






 兄はいわゆる"傑物"だった。
 知識を身に着けただけでなく、剣術は日に日に研ぎ澄まされ、ほとんど独学で聖剣技と呼ばれる剣術の高みを身に着けた。
 やがて平民出身の傭兵部隊の上に立つ存在となり、そして部隊は"骸騎士団"と呼ばれるようになった。
 兄は剣を掲げ、そしてチョコボにまたがり叫んだ。


「民よ、剣を取れ! この国は我々の国である! 国を守ることに身分など関係ない! 少しでも国を守りたいと思う者は、私に続いて剣を!」


 その言葉に、多くの平民が武器を取り、骸騎士団は数千規模の巨大な兵団となった。
 だが、兄に対する人々の評価は、様々だった。


 ある者は「ウィーグラフは神に選ばれた男だ」と兄を賞賛した。
 別の者は「この世の存在ではないのではないか」と兄を悪魔のようだと囁いた。
 また別の場所では「今は平民でも戦力になる。そのためにあの男が必要だ」と兄を認め、一方で「あの男は将来、国に厄災をもたらすかもしれない」と兄を畏れた。
 
 賞賛、畏怖、嫉妬ーーたくさんの感情が常に兄に向けられる。
 そして私は、常に兄の横に立てるよう、兄に負けないように必死で学んだ。


「ミルウーダ。ウィーグラフは凄いが、あんな男が兄では疲れるだろう」


 兄の片腕の一人であるゴラグロスが、ある日そんな私に冗談交じりに言った。


「いや、別に彼を悪く言っているんじゃない。骸騎士団がこうして貴族の一部隊並に見られるのも、彼のおかげだ。だが、妹としては面白くないんじゃないか?」
「どうして?」
「最近ほとんどロクな会話もできていないんじゃないか?」
「……大丈夫よ。私は兄さんが"向こう側"の世界を見せてくれると信じている。そして私は兄さんの足かせには決してならない……そう決めたの」
「向こう側?」
「兄さんを尊敬している人は多いけど、敵も多いでしょう」
「……まあ、そうだろうな」
「私が弱くては、そんな私を懐柔し取引の盾にするかもしれない。私は騎士になると兄を追った時から、兄の横に立つことだけを考えてきたわ。例え私の身に何か起きても、兄の歩みを止めないように……私が兄の弱みにならないように。私はもっと強くなる」
「君も相当だな……まるで古い伝説に語り継がれる聖女のようだ」


 ゴラグロスはアジョラが生まれるより少し前、剣を掲げた女騎士が戦場の中心に立ち、戦争をおさめたという伝説のことを話しているのだろう。
 その本には、女騎士は神々に力を与えられた力を持っていたが、その力を振るわずあくまで一人の人間として戦い抜いたと書かれていた。
 そしてその姿こそが、まさに"聖女"であったと。


「やめてよ、私はそんな高尚な女じゃないわ。悔しいけど、私にその聖女や兄のような、人々を導くカリスマ性なんてないもの」
「そうかな? 君の姿を見て、心を動かされる存在は多くいると思うが」
「もしかしてあなた……私を口説いているの?」
「まさか。そんなことをしたら、ウィーグラフに殺されてしまう!」
「私がどうかしたのか?」


 背後から急に兄の声がして、私とゴラグロスは慌てて振り返った。


「に、兄さん……い、いつからそこに!?」
「いや、今だが?」
「な、なんでもないぞウィーグラフ! それよりお前こそどうしたんだ?」
「ああ……どうやら和平交渉の場が作られたらしい」
「和平交渉? 今更、か?」
「何かあったの、兄さん」
「ああ。ベオルブ家のバルバネス殿が、鴎国に目を光らせたようだ。だがこれでこの戦争も直に終わる……」
「そう……でもこれでようやく、平和が訪れるのね」
「ああ。皆頑張ってくれた。これで畏国も平和になり、望む者は元の生活に戻ることができるだろう」


 そう語る兄の目は、久々に見るくらいに穏やかなものだった。


「ミルウーダ。私達も一度くらい里帰りするか?」
「そうね。それもいいかもしれないわ……でも」
「でも?」
「私はこれからも国のために戦っていきたいわ。私達が頑張ることで平民の力を貴族が認め、みんなが平等に学べる国にしたい」
「うむ。私も同感だ」





 だが、現実は残酷だった。
 戦争が終わり、骸騎士団は何の報酬も賞賛もないまま、解体させられた。
 そしてそれどころか、平民に対する圧政は戦時中よりも強いものとなり、剣を取り上げ、税をさらに多く納めよとのお触れを出したのだ。
 当然兄は反論した。


「何故だッ!? 確かに国全体が貧しいことは分かる。だが我々も戦った……多くの命が犠牲になった! その犠牲に報いることもなく、我々を排除するというのかッ!」


「金の問題ではない。一人ひとりにまで渡せるだけのものがないのであればやむを得まい。だが、それに代わる何か、労いすら与えることもかなわないというのか!」


 さすがに騎士団の上に立っていた兄には直接通達する必要があると考えたのだろう。
 十人ほどの兵を連れ代表して派遣されたという貴族の男と、私と副団長のギュスタヴを後ろに控えさせた兄が、机ごしに対峙していた。


「骸騎士団は解体せよ。それぞれ出身の野に戻り、行うべき生活に戻れとの通達だ。代表である君には納得してもらい、下々の者にそう告げてもらいたい、とのことだ」
「なるほど。私を懐柔し、それで誤魔化そうということか」
「一応、君には搭乗していたチョコボくらいはくれてやっても良いとのことだ」


 どうせそのチョコボも貴様に懐いて使い物にならんだろうからな、と続けた貴族の男に、兄は拳を強く握った。


「私は認めん。全ての兵に、全ての平民に慈悲を与えてはくれないのか……!」
「ふん。下手に出てやれば偉そうなことを……貴様らなど所詮は骸の集まり。骸、いわば人間でない者に与える報酬などあるものか」
「……!」


 事務的に話していた男がしびれを切らしたように、そう口走った。同時に場の空気が張り詰めた。


「人間ではない……だと?」
「ひっ……」
「悪いな。貴様は代表して来ただけであることは分かる。つまり貴様自身に罪はないが……」


 兄が静かに剣を抜いた。同時に相手の兵士も剣を抜き、そして私達も慌てて剣を取った。


「貴様には我々の革命の、最初の狼煙となってもらうッ!」



 そして少しして兄は再び民衆の前に立った。


「民よ! 今度は我々自身の戦いである! 平民の力を見せ、自由を未来の子に!!!」


「今の身分制度に一石を投じよ! 一つ一つは小さくとも、その波紋は必ずや大きな波となる!」


「我が考えに賛同する者は剣を取れ! 神は必ずや、人間は全て平等な存在であると、お許しになるだろう!!」




 兄の言葉に、再び多くの民衆がついてきた。
 だが、兄は重大な計算違いをしていた。


 兄は忘れていたのだ。
 ほとんどの者は知識の木の実を食べておらず、丘の向こうを知らないことに。


 兄は予見できなかったのだ。
 民衆が求めているのは兄の思想ではなく、目先の報酬であることに。


 兄は傑物でありすぎたのだ。
 兄の強さが、知識が、心が、努力が、何も知らず学ばなかった民衆の理解を超えるほどに。



 骸旅団、として平等な世界を作るため革命を志した私達は、次第に統制を失うようになった。
 国を守るという確固たる目的を失い、兄の目の届かないところで、革命とは名ばかりの略奪行為に明け暮れる者が徐々に増えていった。
 そんな中、副団長であるギュスタヴが、独断でガリオンヌに訪問する予定のランベリー領主、エルムドア侯爵を襲い、その身を誘拐し身代金を北天騎士団に要求した。


「ギュスタヴめ……何という事を」
「兄さん……放っておいたほうがいいんじゃないかしら。確かに侯爵は比較的民衆寄りの考えを持つ人だけど、ここで兄さんが動くのは……」
「ああ。オレも賛成だ。ただでさえ我々は盗賊のように扱われ、内部にも亀裂が生じている。お前を失ってしまえば、我々はどうなると言うのだ」
「ギュスタヴの行為は私の責任でもある。何よりもその誘拐には、裏がある……成し遂げさせてはならない裏がな」
「どういうこと?」
「これはただの誘拐事件ではないということだ……そこに正義はない」


 兄はそう言って、アジトから出ようとした。納得してない私は当然引き留めた。


「待ってよ兄さん。兄さんはこの期に及んで、革命ではなく正義のために動くと言うの?」
「ミルウーダ……私に何かあった時は、お前に未来を託す」
「勝手なことを言わないで!」
「お前なら私に代わって骸旅団を……」
「私は兄さんの代わりにはなれない!」
「どうした? いつもだったら、私と同様に扱えと反論するじゃないか」
「そうじゃない。兄さん、ちゃんと生きて帰ってきて。私は兄さんの隣にいるために強くなったのよ」
「……すまなかった。そうだな、お前は昔からそうだった。……必ず戻る」


 兄はそう言って、静かにアジトを出た。
 そしてそれは、最後に見た兄の姿となった。






「うっ……ここまでか……」


 レナリア台地。ここをこえれば、兄達と合流するジーグデン砦まであと少しの場所で、追手に退路を断たれ、そして最後の戦いに敗れた。
 目の前には虫の息なのかすでに事切れているのか分からないが倒れたまま動かない同志達。
 そしてその向こうに、私達の部隊にトドメを刺した、ベオルブ家の貴族だと言う子供がいた。


「ミルウーダ!」
「近寄るな! 私は……私はミルウーダ・フォルズ! 革命の炎が、騎士の心がこの身にある限り、死んでもお前達には屈しないッ!」


 
 私は剣を取り、そしてその剣の先を自分自身に向けた。
 そう、私は骸旅団の戦士。そしてこの世で最も誇り高き騎士であり革命家、ウィーグラフの妹なのだ。
 このまま生き恥を晒すことも、貴族や世の中に屈することも、決してしたりしない。


「!!! 馬鹿な真似はよせ!」
「兄さん……ごめんなさい……」


 私はその剣で、ひと思いに自分の胸を貫いた。





 意識が一気に混濁する。ああ、これが死ぬってことなんだろう……
 そんな時だった。
 私の頭の中に、二人の子供の姿が鮮明に浮かんだ。


ーーにいさん、わたしも騎士になれるかな?


ーーミルウーダならなれるさ。二人で一緒に騎士になろう!



(兄さん……生きて……そして兄さんだけでも……)


 革命を成し遂げ理想の世界を作る兄の姿を想いながら、私の意識は静かに落ちた。


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あとがき

ミルウーダってどんな妹だったのかなと思った結果、兄のことを最高に敬愛している妹だということになった。ウィーグラフよりもやや過激派で即物的だけど、兄の一番の味方で、一番の理解者だったからこそ、兄の正義が認められない世の中に革命を起こしたかったんじゃないかな、と思う。

ウィーグラフについては、ルカヴィと契約した後、「何前年分の知識が入ってくる素晴らしい」というセリフや「民衆なんて所詮そんなものだ」と民衆への恨み言を言っていたのも意識して、誰よりも努力家で知識に貪欲な結果傑物になれたけど、民衆の理解を超えた傑物となってしまった、という感じにしたかった。ディリータのように色々割り切って孤高になれれば、また違った結果になってたのかなとも思うけど、それはミルウーダが敬愛するウィーグラフではないんだろうな。

2016年6月22日 pixiv投稿

 

 

 

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